小さな声で寝息をたてるアキを
起こさないように側に近づき
ベッドサイドにしゃがんであぐらをかく。

そして腕を伸ばし
顔にかかった金髪の髪をどけた。

人形みたいな長い睫毛と
具合が悪いとは思えない
赤く潤いのある唇を見つめる。


…………。

……うん、ヤバイ。


これ以上は理性がぶっ飛びそうで
急いで立ち上がってその場から離れた。


わりぃかよ!
これでもギリギリなんだよ。


と虚しく自分に突っ込みを入れてると
ふと視界に映ったギターケース。


そういえばさっき倒れたとき
地面に落下してなかったっけ?


あわててケースを開け中身を確認する。


久々に見たアキの濃紺のギター。
Ibanez Custom AX。

シンプルなデザインで
俺もかなり好きな型だ。


その音の良さから
プロのミュージシャンにも愛好者が多く
値段もピンキリだから
初心者にも手に入れやすいっていう
幅広く人気のあるメーカー。


アキのは詳しい値段はわかんねえけど
音聞くかぎりじゃけっこーすると思う。


ネックを持ち、表裏をひっくり返す。


よかった、どこも傷ついてない。
……っと何だこりゃ?


ネックの裏面に傷じゃなくて
文字が彫り込んであった。

『YM』


イニシャルっぽいけどアキちがうだろ。
それにわざわざギターに
イニシャル掘るって普通しないし。

頭を捻ってるとまた別の思考。


――そう言えば
今日学校にこれ持って来たってことは
ちゃんと部活来る予定だったんだよな。


普段は強がってる癖に
たまーに素直だったりするし。

そうゆうの、かなりキテ
かわいーなとか思ったり。


ますます理性がヤバクなりそうで
頭冷やすために部屋の奥まで進み
大きな窓を開けた。

すぐに部屋にさわやかな風が吹き込んで
カーテンと紙キレがはためく。


……あ!?紙キレ?