――――――

意識は戻ったものの
まだ少しふら付くアキを肩に抱き
彼女の住むマンションの
エレベータを降りる。


タクシーの中でも熟睡してたし
どんだけ寝てねぇんだよ。


もし彼女が元気だったら
学校を早退して家まで送るなんて事
絶対に抵抗しただろうが

今日はそんな気力もないのか
すまなそうな顔をしながらも
黙って俺について来た。


自分で鍵を開け中に入ったアキは
安心したように玄関に座り込み
靴だけ脱いでしばしその体制。


「おい?大丈夫か?」

「……20秒待って」


有り得ないぐらい青い顔。

俺は少しだけ考えて
「んなに待てない」と
彼女の足と脇の下に腕を通し立ち上がった。

そのまま自分のスニーカーを脱ぎ
遠慮せずにズカズカと部屋を進む。


「きゃああ、やだ、ちょと待って!!」

「ハイ、お前に拒否権はねぇ」


抵抗されながらも持ち上げたアキの身体が
ホントに驚くぐらい軽くて無意識に舌打ち。


こいつ結構身長あるくせに
なんでなんなんだ、この軽さ。


「舌打ちするぐらい、重い?」

「んなわけねぇだろ、
ちゃんと飯食ってんのかよ?」

「食べてるよ
昨日もホットケーキ食べた」

「またそれか。お前も好きだね。
てもそれ飯っていわねーから」

「……おいしいのに。
メープルシロップの甘さは
人を元気にさせる」

「俺は勘弁。
甘いの基本的に苦手だし」

「つまんない男」


何だその返し?

今まで一度だって
女にそんな事言われたことねぇっつーの。