沈黙が広がる保健室。


寝息すら聞こえないアキを見て
もしかしたら
死んでんじゃねぇか!?とか
ありえない事が頭に浮かんだり。


「心配で気が気じゃないって顔」


さっきの言葉をシカトして
保健室に居残る俺に注意とか全くしないで
斎藤先生は椅子をクルリとこちらに向けた。


少しだけそちらに顔を向け
また再びアキの硬く閉じた瞼を見る。


「……俺の、せいだからさ」

「そうなの?
昨日やり過ぎたとか??
だめよ、あんまりガツガツしちゃ」

「は!?何言ってんだよ。
仮にもてめぇ教師だろ」

「あら、意外と頭固いのね藤ヶ谷君。
冗談よ」


超シリアスな俺と対極に
柔らかい空気を醸し出す保険医。

呆れてため息を漏らす。


「笑えねぇ冗談」

「何?もしかしてあんた達
付き合ってないの?」

「付き合ってねえよ」

「そうなの……。
西条さんを見てるあんたの顔見てたら
そう思ったのに。
それに生徒から色々噂も聞くしね〜」

「なんか、面白がってねぇ?」

「そんなことないわよ。
みんな真剣に悩んで
私のとこ、来てくれるんだから。
誠心誠意
ちゃんと親身になって相談に乗ってます。

なんなら相談に乗りましょうか?
女ったらしの藤ヶ谷 リョウ君」


からかう気満々で節を付けて言った
その強い視線を見ないようにして
俺は顔をしかめた。


「いらね。
……っていうか俺あんま保健室こないし
センセイとちゃんと話したことすらねーのに
言葉の端々に悪意っつーか
トゲ感じんですけど」

「あら、そーお?
女子生徒の相談話に
あんた頻繁に登場するから
知り合いみたいに思っちゃって。

私のかわいい生徒達
あんまり泣かすんじゃないわよ!」

「ってイキナリ凄むなよ。
変なセンコー」