柔らかな言葉から感じ取れる
“NO”の答え。


俺じゃこいつの事救えないのか?
こいつの声も
諦めなきゃいけないのか?


やがて雰囲気的に別れの空気が流れ
形式だけの挨拶を交わした。


「――送ってくれてありがとう」

「いや、別に。
お前部活には来いよ。
もう学校では勧誘とか、しねーから」


いつもの調子で話す俺に
彼女は頷いて答える。


それからマンションへ歩き出した
アキの背中に、最後の言葉。

俺がずっと気になってた事。


「お前前に
“叶えたい夢がある”って言ってたよな?
それって何だ?」


アキはエントランスに向かってた足を止め
身体半分だけ振り返ると
星空を見上げて言った。


「……Deep Endの歌を広めること」

「えっ?」


プロになるとか
大観衆でライブとか
そういう系を想像してたのに。


「ケイの歌を世界中に広めること。
それが私の夢」


訳がわからなくて立ちすくむ俺に
再び背をむけると
そのまま彼女は消えていった。


――まさにミステリアス。
あいつには謎が多すぎる。


でも絶対に諦めない。


あいつの過去も今も全部受け止めて
あいつが自由に歌える居場所
俺が作ってやる。


そう強く決意を固めながら
俺はマンションに背中を向けると
アスファルトの地面を強く踏み締めた。