「嫌なの!!
私が歌うと、最後はみんな
私の周りからいなくなる!!

結局いつも一人になって
それで傷つくのはもう嫌なの。
だったら初めから
誰もそばに置かなければいい!!」


泣き叫ぶように声を荒げたアキ。


――これが
彼女をずっと縛り付けていたもの?

孤独を恐れてたから
周りと関わる事や歌うことを
拒んだっていうのか?


これほど強くこいつに思わせるなんて。


「みんなって誰のことだよ?
過去にいったい何があった?」


俺の問いかけには何も答えず
ただ荒くなった呼吸を整える。

返事のかわりに
透明な涙が彼女の頬を伝った。


――もうそれを見たら
何もかも我慢できなくなって
本能のままアキをそっと抱きしめる。


その身体は驚くほど細く
力を入れたら簡単に折れそうなぐらい。


熱くなってるのは
俺の身体か彼女の身体か。
触れたところが燃えるように熱を帯びた。


「こんなの口でしか言えないし
お前は信じられないと思うけど
俺は何があっても
お前を一人になんかしない。

だからアキ俺らのバンドで歌え」


――するとアキは静かに
でも力強く俺の胸を押した。

身体が離れ
彼女の周りにはまだ透明なバリア。


……駄目だ
まだ俺の言葉は届いてない。


少しだけ表情を和らげ
まだ涙の残る目で俺を見る。


「ありがとう、リョウ。
長い間私の事探しててくれたんだってね?」

「何でお前そのこと」

「中原君と有坂君が全部教えてくれた」

「カズマとケンゴが?」


……あいつらそんなの一言も。


「リョウはきっと
私に話さないつもりだろうけど
でもやっぱり知ってて欲しいからって。
凄くうれしかった」