「違くない。
お前の作る曲とあの歌声聞けば
誰にだってわかる。

確かにお前の声は凄い。
だけどお前は
一人じゃいつかきっと潰れる。
一人で音楽やってくなんて
お前には無理だ」


半分マジで半分ハッタリ。
だけどだんだんアキの様子が
違ってきた。

――感情をむき出しにした表情。


「だってそうだろ?
現にまともな曲一つ書けねえじゃねえか?

何だよ悔しいか?
俺の事“ぬるま湯”とか言ったけど
それは誤解してる。

色々思うことがあって
今まで押さえてたけど本当の俺はこんなだ。
グチグチするのはもうやめた。

もともと我慢するとか
俺の性に合わねえし」


身体を強張らせて黙ってしまったアキ。


言い過ぎたか?
でもあと少し。


「今日あの映画を見て、
お前は何も感じなかったのか?

お前が納得する曲が書けんのは
いったいいつの事なんだよ?
それまで歌わなくて
本当にそれでいいのか?

こんなのありえないことだけど
今自分が死んだらどうする?

後悔しないって胸張って言えるか?
やり残したことないなんて
自信持って言えんのかよ?

あの映画のニックも
それにDeep Endのケイも死んじまって
もうその歌声は聞けねぇけど
お前は生きてんだろ!!
だったら歌えばいいじゃねえか!」

「あんたに何がわかんのよ!!」


俺の言葉に対抗するように
叫び声を上げるアキ。


……そうだ。
そうやって感情を素直にぶつければいい。

自分で作った分厚い壁をぶち壊して
こっちに来ればいいんだ。


「わかんねぇよ。
だったら正直に言え!
いつまでも狭い箱の中に入ってんな!」