「“これだって”
自信をもって言える曲が書けたら

そうゆう一人で立ち上がれるだけの
武器を手に入れたら
また歌を始めるつもりだった」

「ソロでやってくって事か?」

「うん、そう」

「何でそうやって一人になりたがる?
昔のあの事が原因か?」

「それもあるけどそれだけじゃない。
誰かと関わって
相手の人生を変えたりとか
運命を背負ったり
背負われたりしたくないの」

「人生って」


この言葉を繰り返した俺に
アキは詰め寄るように言葉を畳み掛けた。


「大袈裟とか思ってる?
じゃあ逆に聞くけど
リョウはどうして音楽やってんの?
ただの趣味?暇つぶし?」

「んなんじゃねぇ!」


そんな生半可な気持ちでやってない。
ちゃんと将来を見据えて
目標をもってやってる。

即答した俺を見てふわりと笑い


「だよね、リョウはそんなんじゃない。
音を聞いてればわかる。

だから余計に一緒には出来ない。
その思いの真剣さがわかるから
バンドを組むって事は
私には足枷みたいに感じるのお互いへの」


言ってる事の意味は何となく解る。
ても絶対に共感は出来ない。


「何でそうやって難しく考えんだよ?
だだ仲間と音を出して楽しい
バンドを組む理由なんて
それだけでいいんじゃねえの?

その延長線上にプロを目指すとか
将来が関わってくるけど
それはやる気には繋がっても
足枷にはならない。

そんな事ばっかり考えてるから
お前はあんな音しか出せねぇんだよ」

「…………」


彼女の回りの空気が瞬間凍り付き
眉の端が上がる。


「前にも言ったろ“狭い”って。
色んな事に縛られて
やりたい事我慢してるから
それが音にも出てる。

お前ホントはギターなんかやるより
歌いたいんだろ?
それに一人じゃなくバンドでやりたいんだ。

心の奥底では
ちゃんと気付いてるだろ。
いい加減認めろよ」

「……違う」