アキの家のマンションに着き
立ち止まった俺は

通り過ぎようとした彼女に
繋いだ手をおもいっきり引っ張られ
驚いて声をあげる。


「おい!お前の家ここだけど」


すると慌てて立ち止まる足。
キョロキョロと回りを確認して


「あっ家もう着いたんだ。
気付かなかった」

「はぁ!?
気付かなかったって
どんだけボケてんだよ」

「……考え事してて」

「考え事って何?」


嘘を許さない鋭い目をむけると
アキは記憶をたどるように


「えーっと、
アーケード街歩いてた時のサックスの音
妙に頭の中に響いて
あと遠くのサイレンの音とか
ブーツの足音とか聞いてたら
頭の中に曲のイメージ浮かんできて

ってごめん。
それからあんまり記憶ないかも。
私変な事口走ったりしなかった?」


と焦った表情。

……それってマジ?


俺はあまりの衝撃に


「はあ!!??」


と叫び声をあげることしか出来ず
アキはさらに焦った様子で


「えっとホントごめん。
もしかしてリョウ
話しかけてくれたりしてた?

私いつもこうなんだよね。
作曲モードになると意識飛んで
外部の物
全部シャットアウトしちゃうから」


思わず乾いた笑いが込み上げてきた。


無言で歩いてたのは
てっきりさっきの話で
思い詰めてるとばっかり。


心配して損した。


――そっかこいつは俺と同じなんだ。