それから俺らは
ケンゴオススメ広島焼きの店に行き

ラッキーな事に
ここがめちゃめちゃいい店で
モダンな店の作りの割に
値段は結構リーズナブルで
味は抜群っていう。


俺らはあまりの上手さに感動して
ギャーギャー騒ぎつつ

広島焼きはもちろん
海の幸や肉などの鉄板焼きメニューも
制覇しながら食事を終えた。


その帰り道
「送らなくても平気」とか
ふざけたことを言う
アキの言葉をシカトして

人通りが大分減ったアーケード街を
並んで歩いた。


両脇のゲーセンとかカラオケのネオンが
アキの顔を照らし
心なしか俺の歩みは遅くなる。


アコギやサックスを抱えた奴らが
すでに閉められた店の
シャッターの前に陣取り
心地よいメロディーを奏でていた。


「お前さ
普段一人で道歩いてる時どうしてんの?
男ヅレの時でさえこの状態だし」


食事した店でも俺が席を外したとたん
従業員とか回りの客とか
こぞって彼女に群がって来てて

席に戻った俺は
キレそうになるのを我慢しつつ
そいつらを蹴散らした。


これは何も興味本位で聞いた訳じゃなく
ただホントに心配だったから。


「普段は大体ヘッドフォンして
聞こえないふりして早足でいれば
7割ぐらいの人は諦めてくれる」


彼女が学校でもよくしてる
シルバーのヘッドフォンが
すぐに頭に浮かぶ。


……ああ、それでいつもしてたのか。


「残りの3割は?」

「あとは、ダッシュして逃げたり
ほんとにしつこい人は
蹴っ飛ばしたりとか。

大丈夫だよ、そんなに心配するほど
危険な目にはあってない」