日曜日ということもあり
道には大勢の人。

カップルやら友達同士やらが
思い思いの目的地を目指し
誰ともぶつからずに歩くのは
結構至難の業だ。


俺はアキの手を引きながら
出来るだけ壁になるように
少し彼女の前を歩く。


「リョウはさ、何で彼女作らないの?」

「何だよいきなり」

「ちょっと不思議に思った」

「お前にしてはめずらしい話題」

「だってさっき
“普通の女”っぽくないとか言うから
それらしくしようかなって」


何だその理由。
やっぱりコイツ変わり者だ。


「無理すんな。
興味ないだろ」

「そんなことないよ。
クラスのちょっと仲いい女の子も
同じようなこと言ってた。
好きな子いないのかな〜とか」

「お前はいるんだもんな
好きな奴」

「……な、何が?」

「あ、動揺してる。
しかも顔赤い。
アキちゃ〜ん、それって誰?」

「リョウには絶対教えない」

「あぁ、やっぱりほんとにいるんだ
好きな奴」


軽く誘導尋問にひっかけたら
簡単に乗ってきた。

いつもこうなら簡単なのに。


「いない、ぜんっぜんいない!」


その顔を見れば
それが嘘だっていうのは丸解り。

彼女の普段の様子とは全然違う姿に
そいつの事がすげぇ好きなんだ
ってのが良く解る。


……っていうか誰だよ好きな奴って。


何とか話題をそらそうとする彼女に
本格的に聞き出そうと気合を入れたとき

ふと彼女の視線が左側を向いた。