外へ出るとたいぶ薄暗くなってて
時間を確認すると六時半すぎ。


「ちょっと早いけど飯にするか。
足疲れたろ?
お前好きな物とかは?」

「……ホットケーキ」

「それじゃ飯になんねーよ。
特にないなら俺決めちまうけど」

「……うーん、焼きそば?」

「屋台じゃねーから。
お前って本当ウケルな。
普通女なら麺類でも
パスタとか言うのに焼きそばって」

「……だって好きなんだもん」


その開き直った言い方が
おかしくて吹き出した。


「ははっ!わーったって。
じゃあさ、広島焼きにしよーぜ。
それなら焼きそば入ってるし
色々鉄板焼きのメニューもあるからさ。

ケンゴに教えてもらった
上手い店知ってんだよ」

「有坂君?
彼関西出身じゃなかったっけ?
何で広島風?」

「よくわかんねーけど
奴の中ではお好み焼きは
関西風より広島風が熱いらしい。
関西人の風上にもおけねーよな。

でもケンゴけっこうグルメだから
うまい店たくさん知ってるし
外れないぜ。
ってことで行くか」


目的の方角へ行くために、
スクランブル交差点を渡ろうと
赤信号を待つ。


車の低いエンジン音や
バイクが高速で走り去る振動。
別のところでは甲高いクラクション。

信号が青に変わるまでの間、
なんとなく無言でアキの方を見ると
意識が少しどこかにいったみたいに
瞳に何も写してないような様子で。


少し気になって声をかけようとしたら
信号が青にかわり
耳元でなじみの機械音が流れ出す。

するとアキは
急に意識が戻ったみたいになって
横断歩道を歩き出した。