「何で男に生まれたいんだ?」

「だって男の方が
一人で生きていくには都合がいいから。

やっぱりどんなに頑張っても
力とか体力では敵わないし。
女ってすごく不自由だと思う」

「一人でって……」


何でそんな言い方。


「だってホントにそう思うから」

「それなら
男に守ってもらえばいいじゃん?」

「そうやって誰かに頼ったりする
依存みたいな生き方はしたくない」

「依存とはいわないんじゃね?
俺が思うに
人間関係は持ちつ持たれつの
役割分担っていうかさ。

例えば力が敵わないなら
それが得意な奴にまかせりゃいいし
反対に精神面で
誰かが弱ってたりした時
力になってやればいい。
お前は色々複雑に考えすぎんだよ」

「似たような事
前にも言われたことがある」


少し俯いてアキは暗い声を出す。


「だろ?
お前はもっと人を頼れ。
ホントは弱いくせに
強がってばっか」


なんて偉そうな事言いながら
アキがそう思った原因に
前に監禁されかけた事もあったと思うから
凄くやり切れない気持ちになった。


「…………」


アキは何か言いたそうな
困ったような目をして俺を見た。


「何だよ?」

「別に。
でもリョウには負ける気がしない。
だって脇、いつも隙だらけだし」

「てめぇ
言ってくれるじゃねえか」


海での脇腹の痛みを思い出しながら
攻撃を仕掛けた俺から逃げたアキは
店の入口の所で急に足を止めた。


「……どうした?」