もしかしたら泣いてるかもと思って
そっとアキの顔を振り返ると

予想は外れ
何か宿ったような力強い目で
ジッとスクリーンを見てた。


その横顔に
何故だか問い掛けてみたくなった。


「ケイ ウォーレンはさ
夢も約束も全て投げ出して
自ら命を絶って
後悔とかしてないのかな」

「……本当に彼が、
自分で命を絶ったって思ってる?」

「えっ!?」


……どういう、事だ?


俺の問い掛けるような視線に
アキは静かに答えた。


「彼はきっと……
夢も約束も守り抜いたよ。
それに、彼ほど音楽を愛してた人を
私は知らない。
だから命を落とすことを
自ら選んだんだ」

「何か知ってるのか?」

「……ん〜カン?」

「なんだよそれ」

「いつも真実が語られてるとは
思わないほうがいいよ」


アキはそう意味深に言うと
「行こっか」と立ち上がった。


俺の前を歩く彼女の後ろ姿を見て悟った。


こいつの事
俺はまだ全然知らないんだ……って。


俺らの間にはまだ分厚い
壁がある。

扉もなければ
簡単に越えられることが許されない程の
――高い壁、が。