それから二人で向かったのは
約束通り映画館。


そこは多くの映画が上映されてる
市内最大級のシネコンで
二人でチケット売場の前に立ち、


「もしあれだったら違うのでもいいよ。
ほらあっちの超大作とか」


と人が大勢並んでる
“地球滅亡を仲間と救う”みたいな
愛と感動系の映画を指差した。

今日は音楽とかバンドとか
関係ない方がいいかと思って。


でもアキは少しだけ微笑んで
首を横に振った。


「ううん、こっちがいいよ。
リョウも見たかったんでしょ?
それに混んでるの嫌だし
あーゆう映画キライ」


あまりのハッキリした言い方に軽く笑い、
「了解」と言ってチケット売場に向かった。


――やがて中に入り
二人分のドリンクを持ち座席に戻ると
チャラそうな二人組に
ナンパされてるアキの姿。

客ガラ空きだからきっと大丈夫だろ
と思った俺は大分浅はかだ。

目つきを鋭くして近付くと
バツが悪そうに二人は去って行った。

ナンパの事にはあえて触れずに
「ん」とアイスティーを差し出すと
どっちへのお礼か
「ありがとう」と
すげぇかわいい笑顔を俺に向けた。


自分の中の“あるフィルター”が
ショートしたみたいな変な感覚。


するとナイスタイミングか
照明が暗くなった。