嫌な予感がして振り向くと
かすかに顔を赤らめ
気まずそうな表情をするタケの姿。

あらかた部室にサボりに来たんだろ。


……この状況
確実に誤解してるな。


一先ず急いで西条の肩にシャツをかけ


「おい、タケ、
これは違うんだって」


なんて彼女に浮気がばれた男の
第一声みたいな言葉。


それに対してタケは
聞く耳を全くもたず
「失礼しやした〜!」とだけ叫ぶと
走ってその場から消えていった。


あー、……まぁいっか。
タケは後でフォロー入れれば何とかなる。
多分。

そうして西条の方に向き直ると
ナイスタイミングというべきか
タケの出現で頭が冷静に働いたらしく

赤い顔をしながら
シャツのボタンを急いで止めていた。


とりあえずはほっとした気持ちで
俺も乱れた襟元を直す。


でもまださっきの感情の余韻からか
西条の灰色の瞳から涙が一筋
頬を撫でるように落下していくのが見えた。


「……私何か、勘違いしてたよね?
ごめんなさい」

「いや、お前が謝んなよ。
追っかけまわして
怖い思いさせたのは俺らの方だ。
ホント、ごめん」


俺らの行動が
昔の西条の傷を思い出させる形になって
彼女を苦しめて、おかしくさせたんだ。


さっきの話凄く気になるけど
俺から聞いたり出来なかった。

やっぱ思い出させんの、酷だよな。


渋い顔をして俯いてると
西条が俺の気持ちに気付いたのか
ポツリ、ポツリと話し出した。