「もしかして西条さんと別れたとか?」

「いや、そんなんじゃないし」


付き合ってるって誤解してんなら
面倒だしそのままにしておこう。


「じゃあさ、西条さんと別れて
真希と付き合ってよ。
私のほうが絶対
リョウの事幸せに出来るよ」


自信あり気な妖しい微笑み。
マジでうざくなってきた。


「真希、悪いけど遠慮しとく」

「え〜冷たい!
じゃあさ、遊び
つれて行ってくれるだけでいいから」

「今俺暇ないし。
ってもそれ以前に
お前とどうこうなるつもりねえからさ」


あまりのしつこさに
いつになくハッキリ拒絶すると
真希が傷ついた顔をして俺に詰め寄った。


「何でよ!
あんなお高くとまった女の
どこがいいのよ!?
こうやって逃げ回ってるのだって
リョウ振り回して
優越感に浸ってるだけでしょ!!」


唇を噛み締めて
悔しそうにする彼女の目を見てハッとした。


「おい、真希、お前西条に……」


今度は逆に彼女の腕をつかんで
問いただそうとしたら
真希は俺の手を勢いよく振り払う。


「もう、いい!」


そう彼女は瞳を潤ませながら吐き捨てると
教室から駆け出して行ってしまった。

誰かを恨むような、
あの表情はヤバイ。

あまりにも浅はかだった自分を
今頃後悔する。

やっぱり学校ではあまり接触するの
やめた方が良いかも。


まるで自分が出口のない迷路で
さまよっているかのような――
一抹の不安が胸に広がっていった。