なーんだ、知らなかったのかよ。
大宮喜久(おおみやよしひさ)さんはあたしのことを孫みたいに可愛がってくれる、やさしそうなおじいちゃんだ。
華頼は今まで色んな男と付き合ってきたけれど、大宮さんはけっこう好きかも。
「あー……それで、俺は今朝までは華頼さんと住んでたんだよ」
「え? 華頼と住んでた……?」
「華頼さんのマンションでね。多分あの部屋も大宮取締役のプレゼントなんだろうなー……」
待って。
華頼って、マンションに住んでんの?
最近戻ってこないと思ってたけど、え……?
「もしかしてマンションのこと知らなかった?」
「し、知らないよ……何それ」
「まあいいや。君が知ってても知らなくてもどうでもいい。で、今日の昼頃かな。俺が牛丼食べに行ってる間に華頼さんが会社に来たらしくて──」
奥原さんのしゃべってることが頭に入ってこない。
華頼、やっぱりサイテーなやつだ。
こどもを置いて別のトコに住んでたとか、知らなかった……