本能的にこの人からはやばそうな感じがした。

だってそうでしょ?

知らない大人が自分の家の前に、荷物を持って立ってるんだし

それに、あたしのことを一方的に知ってるとか、おかしすぎる。


「違います!」


怖くなってあたしは階段を駆け下りようとした。

けど、あたしが動く前に男の人が言う。


「松崎十里子ちゃんだよね? それ」


そう言って男はあたしの左胸を指差した。

学校から外し忘れた名札を見たんだ。

名札には「商業科 松崎」と印字されている。松崎はあたしの苗字だ。


――言い逃れできない