あたしは少しだけ、その存在を忘れていた。

「…あら。」

肩をすくめて、良壱を見た。

「本当に抜けたいって思うんなら、コレ、俺から取っていけ。」

「…ん。」

あたしは頷く。

良壱はポケットに鍵をしまって、家に帰った。

今日も良壱は何も聞かなかった。

何にも。