藤城君は首を横に振った

「まだだよ」

「どうして?
ねえ、なんで聞かないのよ
信二たちのこと…」

「聞いてほしかった?」

藤城君がにっこりと微笑む

「全然」

「なら、質問しないでよ
僕は小山内先輩の悔しい顔が見られればそれでいいんだから」

そう言って

藤城君はマンションの下まで送ってくれた

私がエレベータに乗って、姿が見えなくなるまで

ずっと……

マンションの下にいた

ズルい

ズルいよ、藤城君…

私は藤城君の過去を知らないのに

藤城君は私の過去を見た

それでいて何も言わないなんて……

もしかしてヒドい女だと思ったかな?

信二たちとツルんでいた私を最低だと思ったかな?