「会長、書類の件でお伺いしたいことがあります」

藤城君の脇腹に肘を入れた莉子ちゃんが、笑顔で私を見てきた

え?

藤城君の体が左側に傾いて、崩れていった

膝をついて、ぶつけた足をさすると莉子ちゃんの顔を藤城君が睨んだ

「あら…すみません!
気になったら一秒でも早く解決したいものですから
藤城君が見えませんでしたわ」

にっこりと莉子ちゃんがほほ笑んだ

可愛らしい笑みだけど、藤城君の顔は崩れなかった

ふんと藤城君が鼻で笑うと、あたしたちに背を向けた

何だろう?

冷たい空気が、藤城君を覆っているように感じる

気のせいかな?

考えすぎかな?

「女に負けるとはな~
そんな細っこい身体だから、飛ばされるんだよ!」

「えぇ? そうっすか?
僕、これでも良い身体してるんすよ?
脱ぎましょうか? 腹筋、六つに割れてますよ?」

「男の身体なんて見たかねえよ」

「ええ? 見てくださいよぉ
絶対に惚れますよ」

「そういう趣味じゃねえーんだよ」

いつも通りに戻ったのかな?

あたしは、藤城君と克波君の二人の会話を聞いて少し安心した