「貴美恵さん、あたし…やっぱり」

「ちょ…駄目よ!
ここまで来て気弱にならないの
勇人が来たら、何も言わずにその姿を見せてくれればいいんだから
あとは私がどうにかするから」

貴美恵さんが、またあたしの肩を叩いた

「が、がんばります」

「うん、頑張って!」

貴美恵さんがガッツポーズを見せた

『あ…貴美ちゃん、来たよ』

ドアの向こうから、テツさんの優しい声が聞こえてきた

ドキン……

あたしの心臓が、反応する

勇人さんが来た

もう、ここに来ているんだ

そう思うだけで、涙があふれてきた

「ちょ…泣くのはまだよ!」

貴美恵さんがあたしの手を握りしめた

「ほら…勇人に見せないと!」