「あー、勇人の驚いた顔が早く見たいわ!」

貴美恵さんが、足をばたつかせていた

コンコンとノックするのが聞こえると、ドアの向こうからテツさんが顔を出した

「今ね、藤城君と莉子ちゃんが来たよ」

「なあーんだ
勇人が来たのかと思ったのにぃ」

貴美恵さんがぷうっと頬を膨らませた

「ごめんごめん
もうすぐだよ
貴美ちゃんが電話したとき、勇人は父上の会社にいたみたいだから」

「なんで知ってるの?」

「父から電話があったんだ
思わず『結婚おめでとう』と言いたくなったよ~って笑ってた」

テツさんがにこっと笑った

「なによぉ…言ってないでしょうね!」

「うん、言ってないって」

テツさんがドアを閉めた

貴美恵さんと二人きりになると、あたしはふうっと息を吐きだした