藤城君が、ぎこちない笑みを見せた

「藤城君、無理しないで」

「平気だよ
莉子にきちんと知っておいてもらいたいんだ
僕は、莉子が好きだから…莉子と一緒に居たいから」

「ありがとう
すごく嬉しいよ」

私は藤城君の肩に頭を乗せた

「僕はあまり父の記憶がないんだ
でも兄さんは…父の記憶がある

だから料理ができないんだよ
刃物が怖いんだ

父に刃物を向けられ、幼い僕と母を守ろうと必死だったみたい
だから兄さんは剣道家には向いてないんだよね

真剣を握って、型通りに動くのとか…できないんだ
料理も…包丁が怖いから、できないんだ

仕事場では、平気そうに振舞ってるみたいだけどね」