…なんで、笑っている?

怒らないのか?

なんでにこにこと笑っていられる?

俺は婚約を解消するって、言ってるのに

商談が一つ、ダメになるんじゃないのか?

違うのか?

「勇人も、疾風も…意外と動き出すのが遅くて待ちくたびれた」

父上が、大きく息を吐くとソファにもたれた

「私が反対すると思って、ぎりぎりまで動かなかったんだろう?
疾風と貴美ちゃんが付き合い始めてから、いつ来てもいいようにして待ってたんだけど…」

父上が、面白そうに眉をあげて笑った

え?

待ってた?

テツと貴美恵が付き合ってるのを、知っていたのか?

知っていて知らないふりをしていたいのかよ

…んだよ

テツたちの努力は全部無駄じゃねえか