「私、帰るから」

「気をつけて、帰るんだよ」

愛子さんが立ち上がると、藤城君が口を開く

「帰り道に、事故にでも遭って死ねば楽なのに…とか思ってるんでしょ?」

「思ってないよ」

愛子さんのきつい言葉に、藤城君がさびしい目をして首を横に振った

「嘘よ
私がいなければ、莉子さんと堂々と付き合えるじゃない」

「僕も莉子も…他人を不幸を願ったりはしない」

「私、諦めたわけじゃないから」

「うん、わかってる」

藤城君がほほ笑んだ

愛子さんは私たちに背を向けて、障子を開けた

私も諦めないよ

藤城君と付き合うことを、みんなに認めてもらえるように…

兄様と愛子さんに納得してもらえるように

私も頑張るから

私は心の中で、愛子さんに向かってつぶやいた