「勇人さん、嬉しいです
ずっと父に、『お前さえいなければ』って言われ続けてきたから…
自分に自信がもてなかった
あたしはいないほうがいいって思ってて
なんのために生れて来たのか、不思議で
ずっと不安で……」

勇人さんが一歩前に出ると、あたしを抱きしめてくれた

「そんな風に、もう考えるなよ
俺には桃香が大切なんだ
桃香じゃなきゃ、嫌なんだ」

耳元で、勇人さんが囁いた

優しくて、熱い吐息が、あたしの耳をくすぐる

勇人さんに出逢えて、あたしも本当に良かった

もう…あたしは一人じゃないんだね

勇人さんと一緒に、ずっとずっと生きて行きたい

あたしは、勇人さんの背中に手を回すと胸に顔を埋めた

「桃香、悪い
ちょっと…我慢ができそうにない」

「え? …あ、ごめんなさい
傷口が痛かったですか?」

ぱっとあたしは手を離した

「違う、そっちじゃない」

そっちじゃないって?