「愛子は一人で帰ってよ」

「なんでです?
竜ちゃんのお義母さんに、夕食に誘われたから
居間で待ってる」

「そう…じゃ、莉子も食べていく?」

「え? でも…」

思わぬ言葉を振られて私は、目を丸くした

「あら、楽しそうね
莉子さんもぜひ」

愛子さんが明るい声で賛成する

だけど
賛成しているのは声だけで、目は反対してる

『さっさと帰りなさい』と顔には書いてある

私がいたら…確実に空気が悪くなるよ?

「いえ…兄様が家で待ってるから」

「そっか
じゃ、家まで送るよ」

藤城君がにっこりと笑う

「え? 家って近いのかしら?」

「高校の近くだよ」

藤城君が、愛子さんに言葉を返した

愛子さんの目が細くなり、表情に怒りが見えた