「愛子、何しに来た?
道場に道着を着ていない女性が入るのは……」

「大丈夫、お祖父様には許可をもらったの」

「なんで…」

「久我さんから連絡あって、竜ちゃんが怪我してるからって
救急箱を持って来たの
肩と腕、打撲してるんでしょ?
湿布を貼らないと」

『竜ちゃん』?

ほら、やっぱり親しい仲なかじゃない

久我さんはきっと私を藤城君から突き放したいんだわ

藤城家の後継者だもの

許婚や婚約者がいたって不思議じゃない

兄様だって、貴美恵さんがいたもの

そんなことで私は驚かないわ

「平気だよ」

「ちょっと真剣を持って動いているのを見たけど…痛みをこらえてるでしょ?
腕が全然、あがってない
右肩と左肩に段差があったよ?
きちんと治療しないと…」