キッチンにいるあたしに視線を送ると、勇人さんは立ち上がった

「何を作っている?」

「明日の朝食にしようと思ってた食材を使って、莉子ちゃんに夕食を……」

「お前の分は?」

あたしは笑って誤魔化した

勇人さんから視線をそらすと、包丁を握る

「答えろ
お前の分は?」

「一食ぐらい抜いても……」

「買い物に行くなら、車を出す」

「いえ……大丈夫です
明日のお弁当を食堂のにしてくだされば、朝食までならなんとか…なりますから」

「朝食も抜く気だろ?」

まあ…そうなんだけど

勉強で疲れているのに、勇人さんを買い物に付き合わせちゃうのは悪いよ

「お前の家は、貧乏なのか?」

お父さんが質問をしてきた

「あんたのとこみたいに、何十人と暮らしているわけじゃねえんだよ!
二人で暮らしてるんだから、食材は二人分しかねえんだよ」

「二人で暮らしているのに、まだ…なのか?」

「はあ?」

「ベッドインだ」

お父さんの言葉に、勇人さんはテーブルを強く叩いた

「うるせえんだよ!
さっさとそれ食って帰れよっ」