僕は警察車両が見えなくなると、傘を持ってマンションのエントランスに戻った

エントランスの中には、莉子と桃香先輩が立ってみていた

防犯用の自動ドアを、莉子が開けてくれて僕はエントランス内に足を踏み入れた

「藤城君、怪我は平気?
頬から、血が出てるよ」

莉子が心配そうに僕の顔を見ている

僕はほほ笑むと、桃香先輩の顔を見た

桃香先輩は真っ青な顔をして、じっと外を眺めている

「どうして?
ねえ、なんで藤城君がパパと?
なんでパパは包丁を持っているの?」

桃香先輩の瞳の中に、僕の顔が映った

「すみません
僕は詳しい話を知りません
ただ…兄さんから、写メをもらい、あの人がマンション内に入るようなら捕まえてほしいと頼まれただけです」

「え? 藤城さんから?」

「はい」