「藤城君、忘れ物……鞄を…」

僕は背後からの声に驚いた

莉子?

振り返っている余裕はない

僕は、突っ込んでくる一真の手首に、傘の先を振り落とした

「籠手(こて)!」

力をこめて、打ち込んだつもりだったが…包丁は落ちなかった

「…っち」

落ちないのかよ

力のあるおじさんだな

くそっ

このままじゃ、一真が莉子のほうに行っちまう

僕は傘の先を少し上に向けた

悪いな…莉子に刃物を向けて欲しくないんでね

少々、話せなくなるが…我慢してよ