鍵…したの?
なんで?
「あの…莉子ちゃん?」
『お父様に伝えてください
私、お父様が認めてくれるまでこの部屋から一歩たりとも出ませんって』
「くだらねえ行為だな」
居間へ入るドアの前で様子を見ていた勇人さんが、ぼそっと呟いた
「勇人、莉子はどうした?」
お父さんの声が聞こえてきた
「ストライキ中
桃香の部屋に立て篭もったよ
鍵もついてるし、こっちからは何もできねえよ」
「勇人、ドアを壊しなさい」
廊下に出てきたお父さんが、ドアを寂しそうな目で見つめていた
「鍵のかかる部屋はあそこしかねえんだ
壊したら、桃香の部屋がなくなるだろ」
「壊しなさい」
「嫌だよ」
「勇人っ!」
「修理費は誰が出すんだよ
修理中の桃香の部屋は誰が提供するんだよ!」
勇人さんのお父さんが、ため息をつくと莉子さんのいる部屋の前に立った
「莉子、出て来なさい」
『嫌です
紫桜学院に通っても良いとお父様のお口で言ってくださったら、私の可愛いお顔をお見せします』
「私は何があろうとも許さない」
『なら、私はこの部屋から出ません』
「桃香、腹が減った」
勇人さんがあたしの腕を引っ張った
「え? だって…」
「解決するのを待ってたら、飢え死にするぞ?
二人の勝手にさせておけばいい」