あたしは目を開けると、視界の端に勇人さんの広い背中が見えた

勇人さんは、起きあがってドアに向かって口を開いていた

漆黒の髪を、細長い指でかきあげると、棚に置いてある眼鏡をかけていた

「わーい、証拠の写真、ゲットよぉ」

女性の声が廊下のほうからしてくる

あたしは首を持ち上げて、廊下を見た

え?

貴美恵さん?

貴美恵さんがデジカメを持って、嬉しそうにジャンプをしている

「テツ、見て!
ほら…良いショットでしょ
勇人が桃香ちゃんにチューしているのが撮れたのぉ」

「うん、これはベストショットだね」

テツさんが、貴美恵さんのデジカメを見て微笑んだ