「愛情が感じられなかった?」

「え?」

克波さんがにっこりと笑う

「だから嫌だったんじゃない?
莉子ちゃんはきっとそういうのに敏感なんだよ
愛の感じられない行為には…体が自然と拒否反応を起こす、のかもね」

拒否反応?

まさか…だって、私は…信二の気持ちに気付かなかった

自然と拒否反応するなら、信二とのことに気づていたはずだよ?


「藤城の行為…俺、ちょっとわかる気がする」

「え?」

「みんなの前で、キスとかすんのはちょっと恥ずかしいけどさ
俺の女に触るなよ…って思う気持ちはわかるな

口で『俺の女に…』って言うのも恥ずかしいけど…
…てか、恥ずかしいからふざけてる延長戦でキスしたんだろうけど

男ってさ
独占欲が強くて、好きな女がちょっと他の男と会話しているのを見ただけでイライラすんだよ…て、俺だけかもしれないけど

藤城も同じじゃないの?」

克波さんがちょっと頬を赤らめている

「そういうもの?」

「んまあ、俺の場合は…だけど
ああ…俺より独占欲のある奴は…勇人さんとか?
勇人さんなんか、桃の作ったクッキーを食べようもんなら、殺されるぞ?」

あ…兄様は確かに独占欲が強そう

クッキー?

あ…そっか

だから昨日、夜なのに部屋中に甘い匂いがしたんだ

兄様、桃香さんのクッキーが好きなんだ

桃香さん、昨日、兄様のためにクッキーを焼いてたんだ