「竜之介の兄貴は、警視庁の刑事課に勤務しているエリート捜査官だ
テツの同級生…あのテツを抑え込んだヤツだから、敵に回したくない人だ」

テツさんを抑え込んだ?

勇人さんの義兄のテツさん?

普段は優しく微笑んでいるテツさんだけど、一度怒りだすと止まらない人だった

前に一度見たけど、ナイフを持ったテツさんは怖かったよ!

「藤城君はお兄さんと仲が悪いの?」

あたしが勇人さんに質問をした

「さあ、な
ややこしい事情の家だから、仲良しこよしってわけじゃあねえよ
いがみ合ってるってわけでもねえけど
それなりに棘はあんじゃねえの?」

勇人さんはニュースを見つめながら、答えた

「藤城君が?」

莉子ちゃんが小さな声で呟いた

「私の過去を…藤城君は全部知っちゃったんだ」

莉子ちゃんの目に涙が見えた

「莉子、過去を隠してどうする?
藤城は小さい男じゃない」

「よく…言うわよ……
兄様はひたすら過去を隠しているくせに!
私の過去はすぐに他人に言っちゃうのね
クレアさんのこと…内緒にして」

「莉子っ! 口を慎め」

勇人さんはテーブルを叩いた

『クレアさん』

莉子ちゃんの口から聞いたのは2回目だ