「瑞希か…何だ?
検死報告書なら俺の机に置いておけば、明日には見るが
ああ、悪いな
今夜はもう家にいるんだ
…至急なら、すぐに戻るが…
あ、わかった
すぐに戻る」

兄さんは携帯を二つに折ると、僕の顔を見た

「悪い、仕事が入った
いつ戻るか…わからないから合鍵を置いていく
それを使って、学校に行くといい」

「事件?」

「まあ、な
連続殺人の可能性があるから、直接見に行く必要があるんだ」

兄さんが悲しそうな眼をした

「一日に起きる事件は、数が多すぎて、日々埋もれていく
俺はお前の悲しい報告を聞きたくない」

兄さんはまた俺の頭を撫でた

ハンガーにかかっているスーツの上着を羽織ると、鞄を手に玄関に向かった

「ベッドを使え
整える必要はないから、洗濯物も籠に入れておけ
今度、実家に帰るときに洗って持って行く
朝食は…コンビニで買え
冷蔵庫にはお茶しか入ってない」

「わかった」

「いつでも助けが必要な時は連絡しろ
必ず行くから」

「ありがとう」

「俺はいつでもお前の味方だ」

兄さんは優しく微笑むと、家を出ていった