午後10時ぴったりに兄さんのアパートに到着し、呼び鈴を押せた

ぎりぎりだ

『はい』

ドアが開く

まだスーツ姿の兄さんが部屋から出てきた

ブランドのスーツに身を包み、漆黒の髪をオールバックにした兄さんの目が僕を見ている

「竜之介だよ」

「見ればわかる」

「そっか」

僕はほほ笑んだ

兄さんの顔は、崩れない

ドアを大きく開けると、僕に入るように目で訴えた

僕は頭を下げると、玄関で靴を脱いで中に入った