「…くそっ!」

居間から、勇人さんの苛々した声が聞こえてきた

ドンと何かを蹴る音も聞こえる

たぶん、勇人さんが苛々を解消するために、けり飛ばしたのだろう

あたしは、居間をちらっと見てから莉子ちゃんのいる部屋に向かった

テーブルにクッキーを置いてきたから…勇人さんなら平気な気がする

きっと莉子ちゃんのほうが大変

心が傷ついてる

好きな人と一緒にいたい気持ちを否定されたんだもん

あたしはドアをノックしてから、部屋に入った

莉子ちゃんはベッドに横になって、動かない

あたしはそっとベッドに座ると、莉子ちゃんの頭を撫でた

「兄様はズルい
兄様は好きな人とずっと一緒にいられる生活をしているのに…私にはダメだって言うのよ」

莉子ちゃんが涙を流しながら口を開いた