がちゃりとドアが閉まると、とたんに胸の奥が苦しくなった

寂しさが身体を襲う

藤城君の温もりがない

さっきまで

つい数秒前まで藤城君の腕の中にいたのに

もう藤城君が欲しいと思っている

触れたい

抱きしめられたいと思ってる

私…変だ

こんな風に誰かを想うなんて…

藤城君ってどうしてそんなに魅力的なの

ズルい…ズルすぎるよ

「莉子、少しは控えろ
父上に知られたら、俺が殺される」

兄様の低い声が、頭上から聞こえる

兄様に支えられながら、靴を脱いで家にあがる

家の中では、甘い匂いが立ち込めている

桃香さん、何を作っているのかな?

「どうしてでしょうか?」

「は?」

「藤城君の対内には…媚薬でもあるのかな?」

「はあ?」

兄様の声が一気に下降する

「藤城君ってなんかズルい」

「意味がわかれねえなあ」