8時50分

マンションの下に到着した

足に力が入らず、私は藤城君に支えてもらっていた

腰にまわしている手と

耳にかかる藤城君の息だけで私の身体を敏感に反応させる

藤城君と別れたら、無事に部屋までたどり着けるのかな?

私は藤城君の腕から離れると、ヨロヨロと前に進んだ

「莉子、ドアの前まで送るよ」
藤城君が私に近寄ると、腰に手をまわした

「そんなんじゃ、9時までにたどり着かないよ!」

「藤城君のせいでしょ」

「気持ち良かった?」

私の顔が熱くなった

「莉子は可愛いね」

藤城君が嬉しいそうに笑い、私の額にキスを落とした

「どうして?」

「え?」

「藤城君はなんでそんなに優しいの?」

「好きなんだから、当たり前でしょ」

そういうもの?

信二は違ったから、なんか恥ずかしい

こんな風に歩けなくなるなんて、初めてだし

私、ひとりでボロボロだね