「泣きそうな顔をするな
早くクッキーが食べたい
眠いんだ…昨日、調べ物をしてただろ?
だから、今夜はひどく眠い」

すっとあたしの真後ろに立った勇人さんが耳元で囁いた

肩にそっと触れる指先が、冷たかった

「シャワーを浴びてくる
その間に、クッキーを焼いておいてくれ」

「はい」

勇人さんが安心したように微笑むと、居間を出ていった

どうしてだろう

最近の勇人さん

妙に優しい気がする

食材を買いに行くのに、車を出してくれたり

重たい荷物は持ってくれたり

あたしを気遣うような言動ばかり

昨日だって、ベッドを貸してくれた

そんなふうに優しくされたら、あたしは勘違いしてしまいそう

メイドなのに

ただのメイドなのに…

勇人さんの隣にいけるんじゃないかって、期待しちゃう

でも…あたしはいけない