「お前、莉子に何をした?」

「何って…ナニ…ですよね
他に…あるんですか?」

藤城君はにやりと微笑んだ

藤城君、まるで勇人さんに喧嘩を売っているみたい?

「桃、莉子ちゃん…隣の部屋に行っていようか」

克波君が席を立つと、あたしの腕を掴んで引き摺るように会長室に入った

莉子ちゃんは自分の足で、会長室に入ってくると、ドアを閉めた

「克波君…勇人さんが…」

あたしは克波君の腕を掴んで、隣の部屋に戻りたいと訴えた

克波君は首を左右に振ると、そっとあたしの手に触れた

「二人には超えなくちゃいけない壁がある
それに……大丈夫だろ
藤城が大人になったみたいだからな」

克波君が、にこっと笑うと莉子ちゃんのほうに目を向ける

え?

どういうこと?

「大人って…」

「あいつの髪、見なかったのか?」

「髪?」

あたしは部屋に入ってきたときの藤城君を思い出そうとした

「あ…ロン毛じゃない」

短髪になってた

長く美しい髪を、赤いリボンで結っていたのに

その髪がなかった

用事って、髪を切ってくることだったの?