「莉子ちゃん、もしかして…それって」

「随分としつこい蚊に吸われたもんだなぁ、莉子」

生徒会室のドアが開くと、不機嫌な勇人さんが立っていた

「兄様?」

「勇人さん…どうしてここに?」

「別に」

勇人さんはズカズカと室内に入ると、莉子ちゃんの隣の椅子に腰をおろした

「他にもあるのか?」

「何がですか?」

「蚊に刺された場所だ」

「ええ、体中そこかしこにあります」

「ふうん」

勇人さんは足を組むと、テーブルをダンと叩いた

莉子ちゃんの前に並んでいる書類が、少しばかり振動で動く

「今朝の俺の言葉…覚えているよな?」

「はい」

「…なら、なんで!」

「私がそう望んだからです」

「望んだだと?」

勇人さんの眉に力が入り、皺が寄る

目もつり上がっている

あたしの肌が勇人さんの怒りのオーラでびりびりと痺れてきた

勇人さん、莉子ちゃんが心配なんだね

大切な妹…なんだね

ちょっと、うらやましいな

あんな風に怒ってくれる家族がいるなんて