「可愛いねえ、桃香先輩ってさ」

背の高い藤城君が、あたしの隣に並んで歩き始めた

「純粋でさ、すぐに感情が顔に出で……
見ているこっちが苛々してきるよ」

「え?」

藤城君?

藤城君の体から発せられるオーラに怒りの感情が混じった

「明日も生徒会に行くんで!
覚悟しててくださいね」

藤城君の表情に、いつもの笑みが戻ってきた

「ねえ…どうして、生徒会にこだわるの?」

「そりゃ、桃香先輩の……」

「嘘でしょ?」

藤城君はにっこり笑ったまま、視線を遠くにした

言いたくないのかな?

本当に理由は、隠しておきたいのかな?

でも、教えてくれないと

本当の藤城君がわからないよ?

本当の藤城君はどういう人なのか、知りたいよ

「ある人のため…とだけ、言っておきます」

寂しそうな目をして、藤城君が呟いた

「そっか
それじゃ、がんばって克波君を落とさないと」

「…っでっすよね~
それが大問題にして、超難題なんっすよ」

藤城君が、綺麗な髪を掻き毟った

「まあ、頑張りますよ
んで、桃香先輩のぉ……」

「はいはい」

「あ、冗談だと思ってるでしょ!」

「本気なら、今この時点で何かしてるんじゃないの?」

「あ…そうっすね」

藤城君は声をたてて笑った

とても良い表情をしていると思った

寂しい目をしているけど、温かい感情も持っている人だと思う