「え?……すすいません!」



不意に、びっくりしてお茶碗を傾けてしまう。すると、私の隣で、せっせっと女装メイドとして働いている、裕さんの顔に松茸ご飯がかかったのだ。



今日の朝ご飯は、季節がかなり外れている松茸ご飯だ。しかも、あたしには初めてで味わって食べていた。



あたしなりに……



「ふふ、可愛いお嬢さんの為なら、へでもないからさ」



裕さんは、そう言ってあたしの頬に付いていた米を舐めとる。



「っ……」



あたしは、もちろん一瞬で真っ赤になる。裕さんは、女装メイドの恰好でもかなり美形だ。



そんな美形が、あたしの頬を舐めるなんて行為をされれば当たり前に頬が赤くなってしまう。



「ふふ、お嬢さん可愛いから、食べたくなるね、っ……」



どうやら、遠子が裕さんの足を踏んだようだ。顔を歪めながら、裕さんは、あははと苦笑い。



「裕いい加減にしなさいよ。今は、女装メイドでしょ?執事じゃないの分かってるの?」



「遠子ちゃんには、負けるよ。その勢いで、裕斗を物にすれば良いのに」



遠子の表情が真っ赤になる。



裕斗って誰なんだろう?



あたしは、まだその裕斗って人の事は知らなかった。