誰もいない家に帰った。

暗くて、夏の空気がこもった家。

私は小さい頃からこうだから、慣れていたけど。

波崎は慣れていないんだろう。

鍵を開ける、とか。

暗闇に電気を点ける、とか。

一人でご飯を食べる、とか。

「はぁ…。」

ため息がでた。

思えば、波崎は人を二人身近で亡くしている。

一人は母親を。

もう一人は、私や波崎やあの頃のみんなで殺したようなものの。

あの子を。