西日が江鳩くんの涙を反射させた。

江鳩くんは、手の甲を自分の目に当てた。

「兄貴の手は、心臓が止まっても少し暖かかったんだ。でも…。」

冷たくなっていった。

声にならない事実。

顔を覆った手から、涙が零れた。

「さっきまであった命がもうない。さっきまで握り返してくれたその手はもう握り返してくれない。」

バスケ部のボールが弾む音がする。

「朝まで喧嘩してた兄貴が…っ。」