昼休みに、中庭にいた。

保健室には北沢先生が出張中で入れなかった。

真っ白く塗りつぶされたベンチに座る。

「石月。」

名字を呼ばれる。

声のした方を向くと、ショートカットが立っていた。

友達ではない。

過去を共有するこの学校で唯一の人。

「久しぶり。波崎。」

ゆっくりと、波崎 香(ハサキ カオリ)は笑顔を見せた。

「久しぶり。」

「何か用?」

「別に。ただ呼んでみただけ。」

波崎とは中学が同じだったから。

「もう二年経つね。」

しんみりと言う。

「うん。」

私は頷かないで、言った。

だって、まだ私の中ではあれから時間がピタリと止まってしまっているから。

どんなに私の中で時間が止まっていても、時は正確に過ぎ行く。