振り向かない方が話しやすい。

「私、転校するんだ。」

江鳩くんはピタリと立ち止まった。

「本当?」

「うん。」

ローファーが砂を踏みしめた。

江鳩くんが振り返った。

見上げると、背中をぐっと押されて視界が暗くなった。

目の前に江鳩くんの黒いネクタイが見えた。

江鳩くんの腕の中にいた。

「ななななっ。」

私は体が硬直していた。